基本
手筋
★歩兵の手筋
(1)連打の歩
歩をたくさん持てばいろいろな攻めが狙えます。
下図では、▲1五歩と端歩を突くのが速い攻め。
△1五同歩なら▲1二歩打、△同香、▲1三歩打、△同香、▲1四歩打と三枚の歩を捨てて香車を手に入れます。
このように歩を連打して攻めることを「連打の歩」と言います。
以下、▲1五歩、△1五同歩、▲1二歩打、△同香、▲1三歩打、△同香、▲1四歩打
(2)焦点の歩
下図の後手の守りを「矢倉囲い」と言います。今回は先手の持ち駒の歩を使って「矢倉囲い」の弱点を攻めていきます。 ▲3四歩と突きます。これが、「焦点の歩」の手筋です。
「焦点の歩」とは、たくさんの駒が利いているところに捨てる歩兵のことを言います。
この場合、後手は金将か銀将で歩兵を取ることができますが、どちらで取っても▲3五歩打としてその駒が死にます。
例えば、△3四同銀と取ってきたら、▲3五歩打で△3四の銀が死んでいることが分かります。
以下、▲3四歩、△3四同銀、▲3五歩打
(3)合わせの歩
下図では、飛車と銀将で後手の角頭を攻めようとしています。しかし、このまま銀将を進めるわけにはいきません。
そこで▲2四歩打とするのが「合わせの歩」の手筋です。
後手は△2四同歩と取る一手。そこで▲同銀と取れば銀将が前進したことになります。
「棒銀戦法」で何度も見るおなじみの攻めです。
以下、▲2四歩打、△同歩、▲同銀
また下図になると、後手は2三の地点を守る手がありません。△2三歩打ならもちろん▲同銀成と取ってしまいます。
歩兵を得したばかりではなく、いずれ飛車をなることもできそうです。
以下、△2三歩打、▲同銀成
(4)継ぎ歩攻め
下図では、まず▲2四歩と突きます。△2四同銀では玉将を取られてしまうので、後手は△2四同歩と取ります。そこで▲2五歩打と合わせるのがうまい攻め。
この攻めを「継ぎ歩攻め」と言います。
以下、▲2四歩、△2四同歩、▲2五歩打
また下図は、次の先手の狙いの▲2四歩が厳しい手になります。
ですので後手はそれを防ぐために△2五同歩と取るくらいですが、そこで▲同桂と跳ねるのが好調な攻め。
△4四銀とくれば▲4五歩。また、△2四歩打ならば▲3三桂成、△同金右、▲3五歩となる。
変化①:△2五同歩、▲同桂、△4四銀、▲4五歩
変化②:△2五同歩、▲同桂、△2四歩打、▲3三桂成、△同金右、▲3五歩
(5)継ぎ歩と垂れ歩
下図では、飛車と角行で2三の地点を狙っています。先手の持ち駒は歩兵が三枚あります。
ここでぴったりの攻めは、まず▲2四歩打、△同歩、▲2五歩打と「継ぎ歩攻め」。
更に、△2五同歩に▲2四歩打と垂らすのがうまい攻めです。
これは、「継ぎ歩」と「垂れ歩」のミックス技です。慣れてくればこういう応用を考えたいものです。
以下、▲2四歩打、△同歩、▲2五歩打、△2五同歩、▲2四歩打
また下図では、次に▲2五飛と歩兵を取り、▲2三歩成を目指すのが速い攻めです。
(6)もう一度垂れ歩
「垂れ歩」とは、簡単に言うと、と金を作る手筋です。
と金は金将と同じ働きをしますが、金将以上の価値がある(一歩千金)とよく言われます。
なぜ金将以上の価値があるかというと、金将を相手に渡すと相手の持ち駒に金将が増えますが、と金を相手に渡しても相手の持ち駒は歩兵が増えるだけだからです。
下図では、と金を使った攻めを考えます。▲6四歩と突いて、と金を使った攻めを狙うのが早い攻めです。
△6四同歩なら▲6三歩打と歩を垂らして▲6二歩成を狙います。
以下、▲6四歩、△6四同歩、▲6三歩打
(7)十字飛車
飛車をタテ、ヨコに活躍させる歩兵の使い方を見ていきましょう。
下図では、後手の角行が危ない位置にいます。この局面を見てピンとくる人は盤面を柔軟に見れています。
正解は▲2四歩打です。次の狙いに▲2三歩成、△3一玉、▲3二金打までの詰めろですから、△同歩と取らざるを得ません。
そこで▲2四同飛として王手角取りになりました。
以下、▲2四歩打、△同歩、▲2四同飛
(8)端攻め
三歩持ったら、まず最初に狙いをつけるのは端です。端というのは1筋と9筋。ここを攻めることを「端攻め」と言います。
下図では、1筋、2筋を攻めます。
まず▲1四歩、△同歩、▲1二歩打と行きます。△1二同香と取らせて▲2四歩と突きます。
以下、▲1四歩、△同歩、▲1二歩打、△1二同香、▲2四歩
下図では、△2四同歩と取れば▲1二角成と香車を取ります。相手が受けなければ、このまま▲2三歩成となってと金が作れます。
変化①:△2四同歩、▲1二角成
変化②:△2四同歩としなければ▲2三歩成
(9)三歩持ったら端攻め
次は「三歩持ったら端攻め」の格言を見ていいきましょう。
まず▲1五歩と突きます。△1五同歩と取らせて▲1二歩打、△同香、▲1三歩打と「連打の歩」の手筋を使います。
以下、▲1五歩、△1五同歩、▲1二歩打、△同香、▲1三歩打
下図では、△1三同桂なら▲1四歩打とします。桂馬で取るのは形が悪く、たいてい△1三同香と取ります。
そこで▲1二歩打として▲1一歩成から▲2一と、あるいは▲1二と。
変化①:△1三同香、▲1二歩打~▲1一歩成~▲2一と
変化②:△1三同香、▲1二歩打~▲1一歩成~▲1二と
(10)形を乱す手筋
先手は、持ち駒の角行と歩兵を使って有効な角行の打ち場所を作りたい狙いです。
下図は、まず▲2四歩と突きます。△2四同歩に▲同飛と走ってはいけません。
△2三歩打とされて単なる歩兵の交換に終わってしまいます。
ここでは▲2二歩打とするのが形を乱す手筋です。
以下、▲2四歩、△2四同歩、▲2二歩打
次に▲2一歩成と桂馬を取れば大きな駒得です。そのため後手は△2二同金と取りますが、▲3一角打として金将銀将の両取りが実現します。
実戦では、桂馬の頭に▲2二歩と打つ筋はよく現れますので積極的に狙いたい筋となります。
以下、△2二同金、▲3一角打
(11)金底の歩
「金底の歩」は金の手筋でも触れますが、受けの手筋です。
下図では、後手が△6九飛打として王手をかけてきました。先手は受けなければいけませんが、▲2八玉と逃げるのは△3九銀打とされピンチです。
こういう時はがっちり▲4九歩打と受けるのが手堅い受けです。「金底の歩、岩より固し」という格言がありますが、金と歩の守りのコンビネーションは相性が良いのでぜひ覚えてください。
変化①:△6九飛打、▲2八玉、△3九銀打
変化②:△6九飛打、▲4九歩打
(12)中合いの歩
下図は、△8四香打と香車で王手されたところ。これで詰んでいるのかどうかという問題です。
前に出た、「合い利かずの詰み」に似た形をしていますがどうでしょう。
▲8八歩打は△同金で詰みです。▲9八玉も△8七香成で詰みとなります。▲9九玉も8八香成で詰みです。
変化①:△8四香打、▲8八歩打、△同金まで
変化②:△8四香打、▲9八玉、△8七香成まで
変化③:△8四香打、▲9九玉も△8八香成まで
ここでは、▲8七歩打とする手がありました。△8七香不成なら▲9八玉と逃げます。
以下△8八香成に▲9七玉と上に脱出することができました。
このように、遠くからの王手に対し、途中に歩兵を打って受ける手を「中合いの歩」と言います。
以下、▲8七歩打、△8七香不成、▲9八玉、△8八香成、▲9七玉
(13)大駒は近づけて受けよ
「大駒は近づけて受けよ」という格言はあります。
下図では、△5五角の王手に対してどう受けるのが正解でしょうか。ここでは▲6六歩打とするのが受けの手筋です。
△6六同角と取らせてからがっちり▲7七銀打とする。これなら受けると同時に角取りの反撃となり、手番を握ったまま受けに成功しました。
以下、▲6六歩打、△6六同角、▲7七銀打
下図で、△5五角と逃げればさらに▲6六歩打として先手陣は鉄壁となります。
飛車、角行の大駒は遠くからにらみを利かせてこそ威力を発揮します。それを受けるには、歩で近づけてから金将銀将で反発しながら受けます。セットで覚えておきましょう。
以下、△5五角、▲6六歩打